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家具工房に捧ぐ

家具製作技能士

  • アマチュアとプロ

     木工教室の中でそれとは別に行っていた家具製作技能士講座(全16回)の最終回が日曜だった。今回の講座は参加者8名、40代~50代、全員男子という濃いメンバーだった。当初はどうなる事かと思っていたが、皆さんとても真剣かつ真摯に取り組んで頂き、結果的にはとてもやりがいのある講座となった。
     最終回は若干時間調整的なとこもあったけど、学科試験の解説を1時間行った後「家具と木工、趣味として仕事として」というテーマで更に1時間程話させてもらった。本講座参加者の半分以上は家具製作や木工を本格的な趣味若しくは「業」して考えていたのがこの話をする動機だった。
    40代、50代で家具作り木工を「業」として考えている方は多くて、決してそれを肯定も否定もしないのですが、先日話した内容をもう一度書きます。舌足らずなところもあったので。

     私がこの仕事を始めるきっかけとなった信州のアマチュア木工家・田渕義雄さんなど他2例を挙げて、時間や報酬に捉われず真摯に木工に取り組み、クリエーターとしてはプロを凌駕する作品作りに没頭するアマチュア木工家の姿勢を紹介。
     次に私の事業としての家具製作に取り組む考え方などを説明すると同時に、時間や報酬に対する考え方などを説明。小規模な個人事業であってもそれは会社の縮図のような状態であって、またそうでなければならないという話をした。
     一般的にプロとアマチュアの違いは作品のクウォリティーだと思われがちであるが、そうではない。最大の違いは時間と報酬に対する考え方である。先にも書いたようにアマチュアの中にはプロの作品を大きく凌駕する作家もいて、何故それが出来るかと言えば時間や報酬に捉われない妥協なき作品作りに打ち込めるからである。一方事業としての物作りは、時間と報酬に対する作業に妥協が許されない。
    アマチュア作家の様なこだわりを持ちすぎる事が危険になる。危険になるかどうかは本人次第でこだわりたければこだわればよいかもしれないが、結果的には事業としては継続できなくなり、とても上質だけど価格転嫁できない売れない作品を作ってしまう。と言う事はもはや前述の報酬や時間に捉われないアマチュア木工家になっていく訳である。
     とまぁ、自分でも書いていてよく解らなくなる様な内容の事をパワーポイントとプロジェクターなどを使って真剣に話してしまいました。 こちらの熱意も伝わったのか、話の後ではかなり突っ込んだ質問も浴びせられて楽しかったです。

     しかし綺麗ごとを言うと、プロとかアマチュアとか事業とか趣味とかそんなよく解らない将来の事をクドクド考えるより、今やりたい事に真剣に励む事が一番楽しいのではないかとも思います。

  • 職業と木工

     先週末の木工教室に、遠方から木工体験に来られた方がいました。
     高校卒業後に木工の世界に入る為、来春から職業訓練校の木工コースへ進まれる事を決めておられた。いくつか質問をお受けしたのですが、これから社会へ船出する18歳の方へ、どうアドバイスしてよいものかわからず終始しどろもどろでした。
     技術的な事を言えば、木工の技術はある程度の年数を掛けて学べば、誰にでもできるという事になると思います。以後は家具メーカーや木工所などで賃金をもらいながら働くのが一般的な進路になると思います。ある程度いろいろとわかってくると独立を考える時期が来るかもしれません。将来性と言う事になるとどうなのだろう?結局、私自身がよく解ってなくて、なので質問を受けても答えられない。ただ、木工業・家具製作業に限らず、では何の職業がよいのか?という哲学的質問に回帰せざるを得ません。働く事の本質が問われているのかもしれない。私自身がこの世界を目指す動機のひとつですが、幼少期に自宅の修繕などで出入りしていた大工さん達が休憩中縁側でケラケラ笑いながらお茶を飲んでいて、休憩が終わるとキリっとした顔に戻って仕事を始める姿がカッコいい、とは思わなかったのですが、子供心になんか楽しそうで、これなら自分にもできるかもしれないと思ったのかもしれません。その大工さん達の姿は、やりがい・仲間との共感・報酬・ストレスは見えなかったのですが、それらが集約された仕事というものの一場面だったのかもしれません。これから時代はどんどんかわっていくので、何が幸せの基準なのか大変難しいのですが、直感的にやりたいと思ったことを一生懸命やってみるという事が大切な様に思います。
     やはり、うまく書けませんでした。

    本人と付き添いの親御さん、それぞれ1枚ずつ木の器を掘りました。

  • 職業として

     木工や家具作りを将来的に職業としたい、と言う方が工房に訪ねて来られる事があります。また、弊工房の木工教室に参加されている方の中にも将来の職業として木工の技術習得に取り組まれている方もいます。既にプロとして進まれた方もいます。
     私もそうだったのですが、そういった方のほとんどはある程度の社会経験を積んだ上で、第二の人生としての木工や家具作家を目指しているケースが多い。
     なので年齢は若くて30代。実践できているのは40代? 50代、60代で始めようとしている方もおられます。新たな挑戦に年齢は関係ないと本気で思っていますが、失敗しても挽回できる体力のあるうちに挑戦した方がよいとも思います。しかし現実はそう簡単ではなくて、それぞれの置かれている環境下で模索が続く場合が多いです。
     そんな目標を持った方と話をしていると、そのほとんどが「技術の習得」さえできれば、ある程度はやっていけるといった認識であるように感じます。私の場合ですが、実際の経営環境の中では「技術」のもつ役割は全体の5割、いやもっと少ないかもしれません。割合で示すのは難しいのですが、労働時間内の製作時間に換算すると大体半分くらい、残りの半分は経営全般の事務や調整に費やす事になります。組織でバリバリと働いている方からすると、その残り半分の事務や調整など会社組織のそれに比べれば大した事はない、むしろ得意分野だという方もいるかもしれません。しかしそうでしょうか?会社組織は業務分担が明確化され、それぞれがその業務を着々と遂行しているから成り立っている訳で、小さな家具工房とて、その構造は変わりません。大人数でやるか一人でやるかだけの違いだと思います。
     技術を伴う作業以外の仕事は山の様にあります。お客さんとの連絡・調整、設計・見積り、契約。 売上と経費の管理、それに伴う税務処理。 資材屋や材木店からの資材購入、それに伴う調整や時には交渉。機械のメンテナンスや消耗品の購入。さらにそもそもですが集客。集客は低予算で進めるならホームページ制作になりますがこれだけでも専門的な技術とかなりの時間が必要です、広告などを出すのであれば予算が必要になりますし、広告社との調整も必要になります。そしてこれらの仕事を統括して考える社長業の仕事もしなくてはなりません。自分がしたい仕事をするのではなくて、やらなくてはならない仕事とそうでない仕事の時間配分を考え、従業員でもある自分にそれをさせていくのです。

     木工業に限らず、起業しそれを推し進めていくにはある程度の適正があるのではないかと最近思っています。私は起業当初、お世話になっていた先輩作家に経営やマーケティングを学ぶ事を薦められ、独学ですがそれらの本をよく読んでいました。哲学的なところではドラッガー、経営の神髄的なところは松下幸之助や稲森和夫。マーケティングの本はかなり読んでいたのですが、リサーチを前提にした企業ベースのものが多くなかなか頭に入りませんでした。佐藤義典さんの本が個人事業者のマーケティングには読みやすいと思います。これらの本を読んだときにある程度納得でき、すんなりと頭に入ってくるタイプの人はどちらかと言うと起業適性がるのではないでしょうか?そもそもそんな本を読む気にならないとか、読んでも自分の感覚と関連付けて考えられないタイプの方は、起業向きではない、若しくは起業の困難さを真剣に考えられていないのかもしれません。
    偉そうな感じになってしまったのですが、何かの参考になればと思います。

    意外と大変なんだな~。


     


     

  • プロ

    先日、異業種の職人の方の作業風景を見る機会があった。見ていても分からない事が多く、単純に凄いなと思いました。その旨をご本人に伝えると、技術的にはまだ下積みの段階であると大変謙遜されました。もの作りをやっているといくら上手になっても自分の作ったものに完全に自信が持てないようなところは私もあります。また、そうでないといけないのかもしれません。
    ただ、プロとして事業としてもの作りをやっていく上で、自分自身が完全に納得のいく作品を作る事ができたとしても、採算を見込めなければ趣味で作っているのと同じと言う事になりかねません。限られた時間の中で作品を作り報酬を得ると言う事業として当たり前の事を遂行しようとした時に、もの作りは完全に仕事となり、一定のクウォリティーが確保できれば作品としての完成度に妥協を強いられるの当然の事だと思います。 総合的に商売として成立させているところに本当の意味での仕事の難しさや喜びがあると思います。
    逆に、自称プロの作家さんの中にはその作品性を極めようとするがあまり、商品として値がつけられない物を作り続けている芸術家肌の方も少なくない様に思います。
    冒頭に書いた職人さんはその事業性がとても高く、何よりも全てにおいて一生懸命されている姿がとても好感を持って見る事ができました。

  • 自・公

    先週は内外での打ち合わせなどが多かった。おそらく一週間で打ち合わせた回数の自己記録と言える程いろいろな人と話す機会が多かった。まぁ会社組織などに居ればこんなものではないだろうけど、ただ一人自営業の場合それぞれの打ち合わせに基づいて、後の仕事を全て一人で行うわけだから一件ごとの打ち合わせに対する真剣度は高くなります。他者へ依存している割合が少ないので、無意識に責任感と真剣度が増していく。以後の仕事の方向性や関係者への対応も自らの言葉である程度責任をもって発する事ができる。
    逆に組織のように皆の協力関係に基づく仕事の場合は、個々の責任が軽くなる反面、個人が組織全体に責任を負っているので安易な発言は慎むようになり、借りてきた言葉で無難な方向性を示唆するような発言が多くなると思う。公務員などは特にそう。なぜ公務員を例に出すかと言えば、私が以前公務員だったからです。自営業と公務員、この対局の仕事を経験する中でそれぞれに一長一短あります。書くと長くなりそうですが、書きます・・・
     自営業の良いところはやはり自由であると言うところ。全ての判断を自ら決定できるというところ。反面その判断に基づく責任を全て負わなかればならないところが大変なところです。極めてシンプルな構造です。ある程度社会で働いた経験があって、それなりの年齢になると独立起業する人が多いのは、やはり自らの判断で物事を決定し遂行していく仕事の面白みを実践してみたいからだと思います。あと単に組織を脱したいから。
    一方公務員ですが、こちらの利点は何と言ってもその待遇。勤務時間は相対的に短く、仕事内容の割に高給。リストラがなく年金も多い。圧倒的な安定感を誇っています。しかし20年勤めた経験から内部の難しさの様な事を言うと、自分の本意ではないのだけど、法律で決まっているからと言う理由で筋の通らない仕事を進めないといけないストレス。組織の考え方に逆らっても逆らわなくても報酬は変わらないので黙って従っておこう、という考え方が強くなります。この考え方はいずれ仕事に対する無気力さに繋がります。いくら待遇が良くても無気力に働くということはやはり当時の私にとってはストレスでしかなかったのです。
     一方今の仕事は日々精力的に働けているので、私自身はこれでよかったと感じているのですが、自営業にしろ会社員にしろ公務員にしろ、やはり良い面悪い面ありますので、決断は慎重にされてください。
    なんか、うまくまとまらなかったのですが今日はこれで。

    写真と本文は関係ありません。


  • 自由で多忙

    製作が続きます。

    登山旅行の道中、今後の仕事のあり方などじっくりと考える事ができた。一人稼業は経営と実作業、またプライベートと仕事との関係をどのようにマネジメントしていくかが難しくて、労働時間と収入が比例するので休むと損をしているような感覚になるジレンマがあります。サラリーの仕事をしている人からよく、自営業が羨ましい~みたいな事を言われる事がありますが、そんな事はありません。組織仕事は不自由かもしれませんが、オンとオフが明確なサラリーマンの方がいいですよ。

    と言うのはウソで自営業はかなり自由です、そして全てが主体的に進みます。でもとても忙しいです。