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家具工房に捧ぐ

  • 職業として

     木工や家具作りを将来的に職業としたい、と言う方が工房に訪ねて来られる事があります。また、弊工房の木工教室に参加されている方の中にも将来の職業として木工の技術習得に取り組まれている方もいます。既にプロとして進まれた方もいます。
     私もそうだったのですが、そういった方のほとんどはある程度の社会経験を積んだ上で、第二の人生としての木工や家具作家を目指しているケースが多い。
     なので年齢は若くて30代。実践できているのは40代? 50代、60代で始めようとしている方もおられます。新たな挑戦に年齢は関係ないと本気で思っていますが、失敗しても挽回できる体力のあるうちに挑戦した方がよいとも思います。しかし現実はそう簡単ではなくて、それぞれの置かれている環境下で模索が続く場合が多いです。
     そんな目標を持った方と話をしていると、そのほとんどが「技術の習得」さえできれば、ある程度はやっていけるといった認識であるように感じます。私の場合ですが、実際の経営環境の中では「技術」のもつ役割は全体の5割、いやもっと少ないかもしれません。割合で示すのは難しいのですが、労働時間内の製作時間に換算すると大体半分くらい、残りの半分は経営全般の事務や調整に費やす事になります。組織でバリバリと働いている方からすると、その残り半分の事務や調整など会社組織のそれに比べれば大した事はない、むしろ得意分野だという方もいるかもしれません。しかしそうでしょうか?会社組織は業務分担が明確化され、それぞれがその業務を着々と遂行しているから成り立っている訳で、小さな家具工房とて、その構造は変わりません。大人数でやるか一人でやるかだけの違いだと思います。
     技術を伴う作業以外の仕事は山の様にあります。お客さんとの連絡・調整、設計・見積り、契約。 売上と経費の管理、それに伴う税務処理。 資材屋や材木店からの資材購入、それに伴う調整や時には交渉。機械のメンテナンスや消耗品の購入。さらにそもそもですが集客。集客は低予算で進めるならホームページ制作になりますがこれだけでも専門的な技術とかなりの時間が必要です、広告などを出すのであれば予算が必要になりますし、広告社との調整も必要になります。そしてこれらの仕事を統括して考える社長業の仕事もしなくてはなりません。自分がしたい仕事をするのではなくて、やらなくてはならない仕事とそうでない仕事の時間配分を考え、従業員でもある自分にそれをさせていくのです。

     木工業に限らず、起業しそれを推し進めていくにはある程度の適正があるのではないかと最近思っています。私は起業当初、お世話になっていた先輩作家に経営やマーケティングを学ぶ事を薦められ、独学ですがそれらの本をよく読んでいました。哲学的なところではドラッガー、経営の神髄的なところは松下幸之助や稲森和夫。マーケティングの本はかなり読んでいたのですが、リサーチを前提にした企業ベースのものが多くなかなか頭に入りませんでした。佐藤義典さんの本が個人事業者のマーケティングには読みやすいと思います。これらの本を読んだときにある程度納得でき、すんなりと頭に入ってくるタイプの人はどちらかと言うと起業適性がるのではないでしょうか?そもそもそんな本を読む気にならないとか、読んでも自分の感覚と関連付けて考えられないタイプの方は、起業向きではない、若しくは起業の困難さを真剣に考えられていないのかもしれません。
    偉そうな感じになってしまったのですが、何かの参考になればと思います。

    意外と大変なんだな~。


     


     

  • 木工教室8/21と22

    週末は木工教室でした。

    体験コースのお箸作り。

    熟練者はこんな家具も作っています。 

    テレビボード製作中。

    整理箱製作中。

    器作りの体験コース。

    こちらも器作り。

    スタッフ・トラも元気です、暑いけど。

    treehouseの木工教室ではノミ、ノコ、カンナと言った手道具を使い家具や木工品を作っています。こちらで定めたカリキュラムから始め、カリキュラム終了後は自由製作を行っています。初心者の方にとって木工は決して簡単な作業ではありませんが、失敗しながら少しずつ技術習得していく事を教室のコンセプトとしています。興味のある方は体験されてみてください。↓

  • 突板

    よく「無垢材」とか「無垢の家具」とか言いますが、木材だけを素材として加工・組み立てられた家具の事を他の物が混じっていないので「無垢」と表現するのだと思います。

    例えば、 このウォールナットのテーブルは木材だけを加工後、組み立てているので「無垢の家具」と言うことに。クルミの椅子もそうです。

    これに対し、いわゆる合板構造のものは無垢とは言っていけないのが業界の掟のようになっていて、究極的なところではホームセンターで売っているカラーボックスの様なものは表面はプリント合板で中身は木質系のものが入っているので確かに木でもないし、無垢でもありません。他にも合板構造にはいろいろとあって、表面材の違いですがポリウレタン合板や、住宅や少し高価な家具ではメラミン合板といって、シンク周りの扉などに使われている丈夫な素材のものなどもあります。 
     前置きが長くなりましたが、 合板の中には木材そのものを薄くスライスした突板合板と言うものがあります。

    次作製作の為、資材屋から取り寄せた突板のサンプル、ウォールナットです。
    このペラペラの突板をラワン合板に張りつけた物が突板合板。それを面材とし家具を作ります。突板合板は決して安価なものではなくて、コスト的には無垢材に勝るとも劣らない素材です。では何故家具の製作に無垢材ではなく突板合板を使用するかですが、無垢材は「木」そのもの故、湿度による伸び縮みが季節ごとに発生します。乾燥した冬に家具は小さくなり、湿気を多く吸い込む梅雨時などは少し大きくなります。
    なので、本体とその中で機能する建具を据えている家具などは、戸・扉など永年に渡るスムーズな開閉を考慮し伸縮の無い合板構造で作りたい訳です。

    突板合板を用いた家具、本体は突板を用いた合板構造です。建具は無垢材、または合板構造を状況によって作り分けます。

  • 木工の体験について

    木工を始めてみたい、木工教室に入ってみたいと考えている方向けに体験コースを全4コース設けています。ホームページに詳しく載せているのですが、このところお問い合わせが多いので、ブログからもご紹介させていただきます。

  • 靴箱

    靴箱を製作、お納めしました。

    そこは学校、そうスクール。

    多く学ばれています。そして靴の数も多い

    ので、靴箱も大きい。

    存在感のある脇役です。  末永くお使い頂けますように。

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    このブログでも製作の過程を載せていたのですが、ボリュームとしては過去最も大きな作品となりました。 全て一人で作っているので、どしても製作上の苦労話などをしたくなります。お付き合いください。

    この大きさなので分解構造で製作し現地で組み立てるのですが、まずはその設計が難しくて、分解毎のパーツが小さすぎると組み立てが困難になるし、大きすぎると運べなくなる。また運搬時の車スペースのサイズなどもあって、どこにどう分解点を持ってくるか非常に悩ましいのです。 
     次にこのくらいの大きさの作品になると「矩」と言うのですが、直角を維持しながら作り続ける事にとても気を使います。機械で切っているので直角になって当たり前でないか~と思うかもしれませんが、機械も万全ではなくて部材の配置の仕方や機械の隙間のちょっとしたチリを見落としてほんの0.数ミリの誤差を出してしまえば全体として「矩」が狂いきちんとした箱にならないのです。
    更にはボリュームの大きさ故、安易に作り続けていると作業スペースをどんどん浸食され、作業スペースが無くなってしまうという状況に陥ります。工程の管理が非常に難しい。仕上げはウレタン吹き付け塗装を行うのですが、ウレタン塗装はサンディングシーラーという下地剤を吹き付けた後、研磨を施しその上に仕上げ材を吹き付けるのですが、その研磨作業が膨大で、起業依頼初めて妻に本格的に手伝ってもらいました。 おかげで夫婦仲は非常に悪くなりました、と言うのはウソで良くなりました。というか立場が弱くなりました。と言うか、もともと弱いのですが。
     と、誰が読むねん感のある苦労話が長くなりますが、個人的には大型製作のスキルを更に向上させる事ができてとてもとても満足しています。

    以前の靴箱。

    撤去。。

    製作中。

    工房にて。